諸橋茂一の言語道断

真の経済活性対策のために何をすべきか?

 我が国の経済が非常に厳しい状況になってからもう既に12年が経過している。経済活性化対策としてこれまで様々な方策が採られてきてはいる。つい最近も、日銀が0.25だった公定歩合を0.15に下げ、更にそれを再びゼロ金利に戻す方針を発表している。しかし誠に残念ながら効果らしきものは全くと言って良いほど出ていないのが現状である。また今後においても殆どその効果は期待出来そうにもない。
 それは一体何故なのか?それは一言で言えば、経済の本質を全く無視した対策しか採ってきていないからである。
 経済とは一体何であろうか?経済の基本を一言で言えば、「それは人の動き、物の動き(情報を含む)を随時お金で精算すること」と定義づけることも出来ると思う。とすれば、経済を活性化させるためには人の動き、物の動きを活発にすることが最も効果的であるはずである。
 その為にはどうすれば良いのか?その為には先ず第一に、アパグループの元谷代表もこれまで繰り返し述べておられるように、土地の流動化を図ることである。ピーク時に比べると何と5分の1、極端な所では10分の1と言うとんでもない価格で米国系の企業に買いたたかれている土地の価格を少しでも適正価格に近付ける為に、何重にも複雑に課税されている土地の売却並びに取得に関する税制を根本的に見直し、税率の大幅な切り下げ、又は廃止をすべきである。同時に、不動産購入に関する融資については、バブル時の教訓も充分生かしながらも尚且つ、もう少し柔軟に対応させるべきである。
 土地並びに不動産が流動化すれば、自然に土地や不動産の価格も上がり、結果的に各企業の含み資産価値も上がり、国家全体としても、いわゆる不良債権総額も大きく減少することは間違いない。
 土地並びに不動産流動化の為の真剣な対策を早急に講ずるべきである。
 1929年に起きたウォール街の大暴落に端を発した世界大恐慌の時、当時の米国大統領フランクリン・ルーズベルトは大きく落ち込んだ経済を立て直すために、大規模な公共事業を次々と打ち出し、それをニューディール政策と名付けてそれらを積極的に推し進めた。その結果、米国経済は再び活況を呈するようになったのは衆知のことである。
 今の我が国にもそのことを大きく参考にすべきである。
 最近マスコミの報道等では、公共事業が何でも悪いようなイメージを与えてしまっている面があるが、国家・国民にとって必要なもの・必要なことには当然必要な予算をかけて行くべきである。それは決して今現在に必要な物だけではなく、我々の子や孫、子孫の為に必要なことに対しても適切な予算をかけて行くべきである。そしてそれが経済活性化に大きく繋がるものであれば尚更良いということになるはずである。
 それでは具体的にその様な目的に添った事業とはどのようなものであろうか?
 先に述べたとおり、経済の基本である、「人の動き、物の動きを活発にする為」には高速交通網の整備をもっと進める必要がある。その為の一つとして新幹線網のより一層の整備が必要である。その中でも最優先に整備すべき路線は北陸新幹線である。
 何故ならば、関東地方並びに東海地方で大地震の起きる可能性が非常に高いと言われて久しい。過去の歴史の中で、約80年くらいの周期で関東地方には大地震が発生しているその現実を重く受け止めるべきであろう。
 もしも今、関東地方で大地震が発生した場合、大きな被害が予想されるだけではなく、その復旧には相当な年月が掛かることは当然予想されることである。その時、我が国経済はまさしく混乱の極みとなるであろう。それは現在のような経済不況などと言う生易しいものではないことは明らかである。
 我が国の政治・経済・文化等あらゆる面における中心である東京とそれに準ずる関西が完全に寸断されることになった場合、我が国の経済は麻痺してしまうであろう。
 その様な事態に備える為にも北陸新幹線を最優先で整備すべきである。そうすれば万が一の時にはバイパス的役割を果たすことになり、平時においては非常に過密した状態の東海道新幹線を緩和することにもなる訳である。
 この北陸新幹線を5年くらいの工期に短縮し、予算も大きく前倒しして進めることにより、必ずや大きな経済活性化対策ともなるはずである。(今のような進め方ではおそらく未だ15年も20年も掛かることになるであろう。)
 国際化時代と言われて久しい、今後、国際間における人の往来並びに物資の流通はもっともっと活発になるであろうし、そうすれば国際空港の使用頻度は当然もっともっと高くなるはずである。そのことに対応する為にも、我が国の国土バランスを充分考慮して全国の主要拠点に、もう2〜3箇所、本格的な国際空港(ハブ空港)を整備すべきである。
 そしてその国際空港と全国にバランス良く整備した新幹線網とを連動させるべきである。
 我が国が経済的に落ち込んだ状態にあるとは言っても、実は先進諸国の中では国民一人当たりGDPは世界一であり、経済的な面においては世界で最も恵まれた国である。大多数の国民の生活レベルも世界一であると言っても良いと思う。
 しかし他の先進諸国に対して大きく遅れているところがあるとすれば、その中の一つは街の中の電柱と多くの配線である。それらは都市の景観を大きく損ねてしまっている。せめて全国の主要都市くらいは少しでも早くそれらの地中線化を進めるべきである。そうすれば各都市の景観を向上させることは勿論、保安並びに保全上も良い状態になることは当然である。
 少なくとも以上掲げた、新幹線網の整備、ハブ空港の整備、各都市における地中線化、それら3つの事業に対して、工期を出来る限り短縮し、思い切って大きな建設国債を発行して資金を確保し、事業を進めれば経済全般に対する波及効果も大きく、必ずや大きな経済活性化に繋がり、長期間落ち込んだ景気も大きく浮揚することは間違いない。
 政府は経済活性化対策として以上のようなことを財政再建策と併行して真剣に検討し、思い切った政策を打ち出し実施すべきである。これまでの我が国政府の対応は殆ど無策に等しい。全く言語道断である。
 小泉新内閣には以上のことを充分踏まえて是非共頑張ってもらいたい。
平成13年6月