諸橋茂一の言語道断

成人式からみた戦後教育のお粗末さ

 今月は成人式について書く、と言うよりも再び我が国の教育について書く、と言った方が良いのかもしれない。何故ならば、結論を先に書けば「実にお粗末な成人式の原因は実にお粗末な我が国の教育にある」と言わざるを得ないからである。ここ数年の成人式の非道さと言うか、あまりのお粗末さは正に常軌を逸脱している。特に今年の成人式は酷かった。
 一月八日に行われた高松市の成人式において数人の参加者が、祝辞を述べていた同市長に向かって、何とクラッカーを鳴らし、それを投げつけた。その様な馬鹿騒ぎに対して怒鳴りつけてそれを止めさせることの出来なかった市長も、もう一つだが、その式典に参加していた筈の相当数の市関係者、式典関係者が、その様な馬鹿騒ぎを制止出来なかったことも実に情けないことである。
 一方、高知市の成人式においても、橋本大二郎県知事が祝辞を述べている最中に、高松市と同様、数人の参加者が橋本知事に向かい、馬鹿げたヤジを飛ばしたようである。その時、橋本知事が「静かにしなさい」「出て行きなさい」と二度注意しても言うことを聞かなかった為に、三度目は相当な迫力で「出て行け!」と怒鳴りつけたら漸く静かになった、とのことである。
 この高知市の成人式に、全ての答えが出ていると言っても良いであろう。要するに、真剣に怒れば分かる、静かになるのである。一方、真剣に怒る人間がいないと不心得な若者がどんどんエスカレートする、ただそれだけのことである。
 とは言っても二十歳にもなって、大きな声で怒鳴りつけられなければ分からないという事も実に情けない。実にお粗末なことである。
 高松市や高知市が特別おかしいという訳でも無く、最近の成人式は全国的にこの様な状況のようである。式典中に私語は止めない、携帯電話で平気で話をする。そして、もっとエスカレートすると高松市や、高知市の様な状況になる。成人式場に一升瓶を持ち込み、ラッパのみしていた馬鹿な参加者もいたようである。
 文部省では全国の成人式の実態調査をすることに決めたそうである。そして、荒れた成人式が全国でどれくらいあるのか?その原因は一体何処にあるのか?式典の運営が良くないのか?来賓の祝辞がつまらないのか?等々を調べてそれを基に全国の市町村に対して、今後の成人式のあり方などについて指導するのだという。
 文部省さん、一体何を言っているのか?と言いたい。一事が万事だが文部省の(役人の)ピントがあまりにもズレている。ズレ過ぎているのである。出鱈目な成人式の原因の多くは文部省自身、文部省自体にあるのである。(自虐的な歴史教科書をいつ迄も放置しているのも、あまりにも大きくピントがズレ過ぎている文部省のとんでもない怠慢である。物事全て一事が万事である。)
 教育の問題点については、今現在の我が国の学校教育があまりにも悪すぎる。小学校や中学、高校において、生徒が授業中に騒いでも教師が注意しない、叱れない、怒れない。その為に、生徒がどんどん調子に乗って馬鹿騒ぎをする。その状態を学校では、実に大袈裟に「学級崩壊」などと呼んでいるようであるが、要するに学校の教師がダラシナイだけの話である。
 教師が強い使命感で、体を張って毅然たる姿勢を貫かないから生徒から馬鹿にされる、無視される。俗な言葉で言えば、舐められてしまうのである。一学級の生徒数が多すぎるから十分な対応が取れない、などと実に最もらしい理屈を並べて一学級40人から30人、更に20人へと減らし続けている。しかし、それにも拘わらず学級崩壊は一向に解決しない。それは極く当たり前のことである。
 問題の本質は、生徒数にあるのではないのである。それは責任転化しているだけのことである。何故なら、我々の小学、中学、高校時代(昭和20〜30年代)は50人学級が当たり前であった。しかし、その当時、その様に馬鹿げた学級崩壊などと言う状況は無かったし、その様な言葉さえ無かったのである。(但し、当時でも先生がダラシナイと、その先生の授業中、騒がしくなる事はあった。)
 決して、一学級あたりの生徒数を減らせば解決出来るというような問題ではないのである。それを解決するための方法は、先ず何よりも教師が(特に男子の教師が)もっと心身を鍛え、文武両道の意志を強く持って精進を重ね、強い使命感、強い気概を持って生徒に対応することである。そうすれば学級崩壊などすぐに解決出来る。もしも小生に学級崩壊でどうにもならないクラスを任せてくれたならば、即日解決出来る自信はある。
 女性の教師にその様なことを求めることは、少し無理があるかもしれない。しかし、男子の教師が「私のクラスは学級崩壊状態で手が付けられません」などと最もらしいことを言って嘆くのは、その教師がダラシナイだけの話である。何も難しい話ではないのである。
 学校の学級崩壊状態が、そのまま成人式の場でも出ている。ただそれだけのことである。学校で一人一人の(男性)教師がもっとしっかりすれば、学級崩壊も無くなり、成人式での馬鹿騒ぎも無くなる。とは言っても、現実的には学校での学級崩壊状態はすぐには解決出来ないのであろうから(ダラシナイ先生が急にしっかりするとは思えないから)、当面、成人式を静粛に行う為には、成人式出席者の中で馬鹿な態度、行動をとる人間がいたならば主催者側が橋本知事のように真剣に怒鳴りつけるか、その様な不心得者を場外に抓(つま)み出せば良いのである。
 成人式で馬鹿騒ぎをする馬鹿者(若者)共も馬鹿者であるが、それにいつ迄も手をこまねいている主催者側の方も実に情けない。相方共に言語道断である。
 この様に馬鹿げたことをいつ迄も放置しておくと我が国の将来は実に危うい。正に憂うべき状態である。何としてでも「まともな日本」を、一日でも早く取り戻さなくてはいけない。
 その為には、我が国のお粗末な教育、卑屈な外交、自虐的歴史教育、テレビの低俗番組、野放しの低俗雑誌、それらを真剣に改めなくてはいけない。頭の髪の毛を茶色や金色に染めるのを、黙って放置しているのもいけない。
 去る1月17日小松基地で成人式を迎えた隊員達(43名)の為に、独自の成人祝賀会が催された。
 (小生も出席させて戴いた)誰一人として、私語も携帯電話の音も無し、最初から最後まで静粛に式典が挙行された。この事実を見ても決して現代の若者が特別おかしいのでは無いのである。同じ若者でも自衛隊のようにしっかりした人間教育をすればしっかりした若者に、しっかりした日本人になるのである。(隊員の皆さんの顔を見てつくづく思った。「これが日本人若者の本来の目だ、本来の顔だ」と。それ程一人一人が素晴しい顔、表情をしていた。)
 若者がおかしくなるのは、指導する立場にいる人間がダラシナイ、国家全体がダラシナイのである。
 何としてでも、まともな日本に創り直さねばならない。
平成13年4月