諸橋茂一の言語道断

ロシア訪問記

 平成12年7月23日〜8月2日迄、単身でロシアとフィンランドに行って来ました。今回はその内のロシアについて触れさせて戴きます。ロシアではサンクトペテルブルグとモスクワを訪問しました。
 ロシア連邦は、国土面積1,707万5,400平方キロメートル(日本の約45倍)、人口約1億4500万人、GNP約43兆5,200億円(日本の約11分の1)という概要です。
 日本であれば、相当以前に廃車にした様な車が多く走っています。又この事はロシアだけでは無く欧米(というよりも世界)全体に言えることですが、洗車をして走っている車はめったにいません。我が国では全く考えられないことです。日本人の綺麗好きという点も世界に誇るべき美点です。そしてその様な美的感性の優れた面が、精度の高い商品生産、より高品質の商品開発、不良品の少ない商品製造にも繋がっていると思います。
 サンクト・ペテルブルグでは、イサク聖堂、マリンスキー宮殿、カザン寺院、スパース・ナ・クラヴィ聖堂、アレクサンドリンスキー劇場、旧商品取引所、ペトロパーヴロフスク要塞、エルミタージュ国立美術館、旧海軍省、ニコライ聖堂、スモーリヌイ寺院等を見て回りました。
 タクシーにはメーターがついておらず、乗る度毎に運転手と価格交渉しなくてはいけません。
その様な時、ロシアのルーブルよりも米国のドルの方が、条件が良くなります。何故ならデノミも含めてルーブルの価値が下がり続けているからです。今やロシア経済はアメリカに牛耳られてしまっているという状況です。
 ロシアにはマーケット等に品物が充分に無い、という報道を以前に見たことがありますが、決してそんなことはありませんでした。何処のマーケットにも商品は充分並んでいました。
 サンクト・ペテルブルグからモスクワ迄約650kmを列車で移動しました。途中の駅は全て100年程前に建てた様な古い駅ばかりで、しかも荒れ放題、全く修理もしていません。沿線の民家も非常に古い家ばかりで、モスクワに着く迄に新築の家を見たのは、数軒のみでした。しかもモスクワ迄の約650kmを何と10時間もかかりました。日本なら新幹線で僅か2時間半くらいの距離です。
 7月31日にレニングラード駅で切符を買おうとして窓口に並んだ処、僅か10人くらいしか並んでいなかったのに、小生の順番が来たのは何と1時間半後でした。何と一人に15分くらいかけて切符を販売していました。あまりのスローモー、低能率な仕事ぶりに、全くあきれてしまいました。しかも、やっと小生の順番になったと思ったら、何と昼休みだからと言って、窓口を締めてしまいました。
 我が国では全く考えられないことです。お客様第一主義どころか、全く反対にお客様のことなどは、どうでも良いと言う対応です。これでは、経済もおかしくなるのが当たり前だと思います。
 モスクワでは、クレムリン宮殿、赤の広場、ボリショイ劇場、ロシア連邦内閣ビル、モスクワ市庁舎、ウクライナホテル、文化人アパート、凱旋門、モスクワ大学、救世主キリスト聖堂等を見て回りました。
 帰国する日に、空港迄乗せてもらったタクシーには右側のサイドミラーが付いていなかったので、運転手さんに「こんな状態で問題はないんですか?」と聞いた処、「警察に止められても、幾らか警察にお金を払えばそれで済んでしまう。」と答えていました。全くとんでもない話です。
 第二次世界大戦後、長期間に亘り、米国と世界を二分し、一方の旗頭であったロシア(旧ソ連邦)が何故かくも周落したのか?
 それは共産主義思想を基に社会主義体制下で「労働者の国を創る」というスローガンの下に、労働者がいきなり国家・社会・企業(又は企業的な組織体)を動かそうとしたところに根本的な間違いがあったと思います。昨日迄一労働者の立場であった人間が、いきなり大企業のトップになったり、政府の中枢に立つ、ということは根本的に無謀なことです。松下幸之助さんも本田宗一郎さんも、一労働者からある日突然に大企業のトップに立たれた訳ではありません。長い年月の御苦労と困難苦難を乗り越えられて、正に血の小便を出し、血を吐く思いを乗り越えられて、初めて大企業のトップになり得た、名経営者となられたのです。
 企業経営者の場合も、国家経営者たる政治家の場合も、ある日突然一労働者から成り上がる、ということは根本的に大きな無理があります。二世、三世議員も同様です。我が国の場合は二世、三世議員があまりに増え過ぎていることも、政治混迷の大きな原因です。
 経済的な面においては、世界の中で現在の我が国ほど恵まれた国はありません。しかし、誠に残念乍ら多くの国民がそのことに気づいていません。しかも自分達の祖国日本に対して、自信と誇りを持っていない人達があまりにも多過ぎます。(その大きな原因は卑屈な外交姿勢と自虐教育、マスコミの偏向報道並びにテレビの低俗番組等にあります。)我が国はロシアを反面教師とし乍ら、日本人としての自信と誇りを持てる国に何が何でも創り直さねばなりません。
            以上


(鎮魂) ※帰国後、去る8月8日(旧ソ連が昭和20年の同日、日ソ中立条約を一方的に破棄し、我が国に対して宣戦布告書を突き付けた日)にモスクワの「プーシキン広場」の地下で爆弾テロがあり、死者8名、重軽傷者97名の犠牲者が出ました。小生が歩き回った範囲内で起きたテロです。小生のロシア行きの日程が少しずれていたら?と考えるとゾッとします。ロシアの政情不安定を物語っている事件・惨事です。その後、8月12日にはロシア原子力潜水艦の自沈事故により、118名の乗員全員が死亡するという非常に傷ましい事故が発生しています。一事が万事で今のままのロシアでは絶対に駄目だと思います。犠牲者の方々の安らかなる御冥福を衷心よりお祈り致します。
合掌

平成12年10月